
貸切の五右衛門風呂は宿泊客のみ利用可能で、40分1,200円。15時からの営業で21時受付終了だが、確実に入るには、チェックインと同時に受付を済ませておきたい。

アメゴの刺身に鮎の塩焼き…。祖谷自慢の川魚料理はどれも新鮮で臭みがない。ちなみに鮎の塩焼きをおいしくいただくには、スダチを絞るのではなく、絞りながら焼いた鮎にこすりつけるようにするとよい。これだけで、一段と風味が増す。地元育ちの支配人からの受け売りだ。

客室は2部屋を除いてすべて和室。障子戸を開けると、ここからも渓谷のパノラマが見渡せる。

かずら橋までの送迎に活躍している懐かしいボンネットバスは、ホテル自慢のひとつ。 |
ここから少し山を下りたところに、「半兵衛の五右衛門風呂」という貸切風呂もある。予約しておくと、その時間に合わせて薪で沸かしてくれるのだ。いまどき五右衛門風呂に巡り合う機会などめったにない。当然、ここの湯にも挑戦することに。
釜ゆでの刑に処せられたという大泥棒の名が由来となった五右衛門風呂は、鉄製の湯船をかまどの上に据えて炊く方式の風呂である。底の部分は特に熱いので、注意が必要だ。湯殿に書かれた入り方に従い、ゲスイタ(丸い底板)の真ん中部分に乗り、ゆっくり踏み沈めると、小さな湯船からザザッーと、湯があふれ出た。思い切り手足を伸ばして、というわけにはいかないが、こんな風呂もまた一興。
さらに、この宿の温泉はこれだけでは終わらない。本館三階には大浴場があり、ジャグジーに、ジェットバス、サウナ、水風呂と、ことらもいたれりつくせりなのだ。この大浴場から、露天風呂、五右衛門風呂まで、多種多彩な風呂を満たしているのは、全て谷底からくみ上げた温泉である。かすかに硫黄臭の漂う単純硫黄泉で、さらりとした肌ざわり。日によって、黄、白、紫などに薄く色づくことがあるのも、天然の恵みならではといえるだろう。
ちなみに、風呂を巡る間、幾度となく出てきた「半兵衛」という名には、ホテルの社長のおじいさんの名前だそう。祖谷の時代の懐かしい故郷の風情を感じてもらいたい、という思いで名づけたようだ。
そんな温かな気持ちは、お湯だけでなく、囲炉裏端でいただく食事からも伝わってきた。夕餉には祖谷名物のそばをはじめ、鮎、アメゴ、いも、ユズ、スダチなど地元の食材をふんだんに使った皿が次々と並んだ。じゃがいもと豆腐を田楽にした「でこまわし」をほおばっていると、給仕の女性スタッフが、「祖谷のお豆腐は固いでしょう。石豆腐といって、水分が少ないので日持ちするんです」。こんなたわいもない会話が、山里のご馳走をさらにおいしいものにしてくれる。
夕食の後には、もう一度「天空の露天風呂」に行くつもり。夜も更けた深山、体中で湯の温かさを感じながら見る満点の星の美しさは、いかばかりであろう。明日の朝は、運がよければ露天から荘厳な雲海が見えるかもしれない。そんな期待が、いやがうえにも高まるのであった。
湯元新祖谷温泉 ホテルかずら橋
徳島県三好郡西祖谷山村善徳32
TEL0883−87−2171
宿泊/1泊2食付き一人15,900円〜(税込)

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