
山里とはいえ、徳島自動車道土成インターチェンジから、わずか5分という便利さ。鳴門市内、高松市内へも車で40分程度。

天まで届きそうな阿讃の山並みを眺めながらお湯につかると、開放感たっぷり。夜は漆黒の闇に満点の星が輝く。肩こりにうれしい打たせ湯も。

吉野川の青石を贅沢にあしらった大浴場。青石は御影石などに比べ、濡れても滑りにくいということに、はじめて気がついた。 |
ひなびた山里の温泉宿でさえ、その名が知れると、こぞって秘湯マニアが押し掛ける昨今。本当の隠れ家といえる宿には、なかなかお目にかかれないものである。穴場は、意外なところにあるものだ。
四国三郎・吉野川に流れ込む支流に沿って山間にはいると、美馬、ふいごなど小さな温泉が各所に点在する。御所温泉観光ホテルもそんな温泉宿のひとつ。吉野川の支流にあたる宮川内谷川沿い、冬枯れた湖に寄り添うように、その宿は佇んでいる。
「観光ホテル」といっても、四方を阿讃の山々に囲まれ、隣に道の駅があるだけで、他に観光地らしい賑やかな施設は何もない。湯と共に寂とした山の時間をゆっくりと味わいたいなら、同じ徳島で秘境として名高い祖谷にまさるとも劣らない。せわしなく客を呼び込む土産物屋も、ひっきりなしに行き交う観光バスのエンジン音も、ここでは無縁の世界。春には湖畔のサクラ並木が華やぎ、秋には山々の紅葉が見事な彩りをみせてくれる。しかし、どうせ都会の喧騒から逃れるなら、人気の少ない冬場を選びたいもの。近くに八十八カ寺のいくつかが点在しているので、遍路宿として利用する巡礼客にちらほらと出会うくらい。ひとり静かに、あるいは気心の知れた連れとのんびり、世俗を忘れたときを過ごしたいという御仁にはぴったりだ。にぶい冬の陽射しを背に受けて、枯れ木の間を縫い、落ち葉を踏み締めながら湖畔をあてもなく散歩してみる・・・。たまには、こんな時間も必要だ。
ここでの主役は、なんといっても温泉。二階の大浴場には、展望露天風呂もある。目の前には山並みが迫り、眼下には宮川内ダムの湖面が広がる。悠然とした風景を眺めながらゆったりと湯に身をまかせていると、散策で冷えきった体が、じんわりと芯から暖まってくるのがわかる。しんと澄み切った山の冷気が、ほてった頬に心地よい。湯は17度の冷泉をわかしたもので、無色透明だが、かすかに硫黄のにおいが立ちのぼり、温泉気分を盛り上げてくれる。ここでは、露天風呂の石も浴場に敷き詰められた石も、すべて阿波の名石・青石が使われている。湯に洗われるとその岩肌がしっとりと濡れて、さらに青さを増すようだ。
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