

一度部屋に入ってしまうと、外出したくなくなるほどの居心地いい空間。テレビはないが、CDプレイヤーがあるので、お気に入りを何枚か持っていっておきたい。

デッキの下は鏡川の支流・東川の渓流が。ここちよいせせらぎが、天然のBGMになっている。

天井のダイナミックな木組みが目を引く大浴場。わずかな掃除の時間を除いて、朝の六時半から夜十時までずっと開いているので、気ままにいつでも温泉を楽しむことができる。

日本の露天風呂といえば岩ぶろタイプのものがほとんどだが、ここは木貼りのデッキタイプで、ちょっとしたスパ・リゾートの雰囲気だ。
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「オーベルジュ」。その甘い言葉の響きを耳にするだけで、旅の誘惑にかられてしまう。フランスで生まれたオーベルジュとは、ゆとりと贅沢を売り物にした宿泊施設付きレストラン。泊まるだけでなく、その土地ならではのとびきりのご馳走に出会うことができる場所をいう。四国ではまだまだ珍しいコンセプトだけに、とにかく一度訪ねてみたいと思っていた宿、それが「オーベルジュ土佐山」だった。
この宿の舞台は高知の奥座敷といわれる土佐山村。周囲にあるのは、川のせせらぎと緑の山々だけだ。そんなひなびた山里に、突如として洒落たガラス張りのホテルが姿を見せる。ツインルームが十二室にヴィラ四棟という、小さなそしてひっそりとした静かな佇まいのホテルだ。都会の喧噪から逃れてやって来たのであろうか、駐車場には神戸ナンバーやなにわナンバーの自動車もちらほら見受けられる。
チェックインを済ませ、赤い吊り橋を渡り、木立ちの中を通って案内されたのは、隠れ家のようなヴィラだった。
「さてと…」。旅装をときながら、いつもの癖でついテレビのリモコンを探している自分に気が付いた。しかし、部屋にはリモコンどころかテレビそのものが無く、時計すら置かれていない。ここでは俗世間のことも、時間も、すべて忘れてくつろいでほしいということなのだろう。気忙しい日常が当たり前になっている自分が、何もしないという極上のぜいたくを果たして味わいきれるのか、一抹の不安を感じたが、とりあえず備え付けのミニキッチンでコーヒーをいれて、ひと息つくことにした。開け放たれたデッキテラスの向こうには、一枚の絵のようにどこまでも深い森の風景が広がっている。暖かいコーヒーを飲みながら、ひんやりとした山の空気も一緒に味わっていると、清々しく気持ちが満たされいつしか時間が経つのも忘れていた。
北欧のロッジを思わせるような洒落たスタイルの部屋。なのに、どことなくノスタルジーに駆られるのは、使っている素材のせいらしい。重厚な木組みは土佐の杉や檜、そして白い壁は土佐しっくい、障子やランプには土佐和紙と、この地で育まれた自然の素材が巧みに生かされているのだ。
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