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西土佐村から再び県境を跨いで松野町に戻る。狭く、曲がりくねった国道は、まさに鰻の通り道のように思えてくる。目指すのは、四万十の川漁師からもその名をたびたび聞いた川魚料理の分末廣。
実はこの店を知って30年にはなる。学生時代には、滑床へキャンプに行った帰りには必ず寄っていた。当時から鰻で有名だったが、学生の小遣いで食える料金だったと思う。今では県下で天然鰻だけを出す店は、ほぼここのみになった。その分、安くはない店になっているが、漁法を考えればやむをえないところ。年に数度はここの鰻を食いに来たい。そんなファンが多いのか、知人にこの店でちょくちょく出くわす。
内装がきれいになっていて驚いた。調理場には女将の友岡勝子が立っている。ご亭主が倒れ、きれいな店から出してあげようと一念発起して改装したら、とたんに回復したのだ、と笑いながら言う。まずは目出度しというべきだが、まだ調理場に立つのは無理のようだ。
元々、料理旅館で創業は60年ほど前。勝子はここへ琵琶湖の畔から嫁いで来た。「だから昔から川魚が好きで」と一人で店を切り回して少しもたじろがない。
まず鮎の塩焼きが来た。炭火で焼いた鮎は旨い。今日はコースを組んでもらっているので、出てくるものはお任せだ。地元の酒蔵から「野武士」の純米吟醸を仕入れておいた。あとはひたすら飲んで食うだけ。
時々漁師がやって来て、鰻をおろしていく。その度に女将が量って現金を渡す。そして必ず「またお願いね」と声を掛ける。出入りの漁師は30人ほどいるそうだが、「店はともかく、うちの漁師はみんな一流」なんだそうだ。これが命綱だものな。川水を汲み上げた池には常時100万円分の鰻が泳いでいる。
届いたばかりの天然鰻を捌いて焼いてくれた。「焼きは一生というけど、本当やねえ」。問わず語りの講釈を聞きながら焼けるのを待っていると、たまらない匂いがしてきて…。蒲焼き、肝吸い、うざく、う巻、八幡巻、骨せんべいと、ひととおり出てきて、堪能した。小技よりも、鰻本体を大胆に食うのがやはり一番旨いが、発見だったのは、ごぼうを芯にして鰻を巻いた八幡巻。ごぼうに負けないためには天然鰻の強さが必要だったのだ。養殖鰻だと、ごぼう料理になってしまう。
その天然鰻の味を伝えようとして、はたと困った。明らかに養殖物とは違うのだが、それをどう表現すればいいのか。考え込んだ挙げ句、不意に浮かんだのは「日なたくさい」というフレーズだった。祖父母の家の、日なたの匂い。失ってはいけないもの。これで9975円を高いと思うか。さあ、あなたならどうする?
末廣旅館/分末廣
愛媛県北宇和郡松野町松丸
0895-42-0156
0895-42-0483
11:00〜19:00(食事のみの場合) |
岩城食堂
高知県四万十市西土佐津野川
0880-52-1172
8:00〜20:00
第1・3日曜定休(8月は無休) |
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西土佐鮎市場
高知県四万十市西土佐江川崎
0880-52-1148
8:30〜17:00
日曜定休 |
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※文・写真は四国旅マガジンGajA013号』(http://www.kk-spc.co.jp/gaja/)からの転載です。基本的には発売した2002年8月1日時点のデータですので、現在は変更になっている場合もあります。なお、住所・電話・料金は2005年7月15日現在のものに更新しています。あらかじめご了承ください。
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