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牛丼が消えたと思ったら、続いて鶏も怪しくなった。自然の摂理に背いてきた報いだろう。大量生産と大量消費という理屈は、こと食品の場合、最初から根本が危ういのだ。世の中にはおのずから適正規模というものがある。それは必ずしも経済効率とは合致しない。それでいいのだと、そろそろ腹を括る必要がある。
四国は今のところ、何とかなっている、と思いたい。少なくともそんな食材を追いかけて味覚の旅を続けよう。ということで、今回は四国山地のふもと、城川町へ手作りハム・ソーセージを食べに出かける。
宇和町まで延びる高速道(※1)に伊予インターチェンジから乗ると、前方の山並みに白いものが見えた。残雪かと思いながら、トンネルを抜けるといきなり吹雪いた。あれっ。運転手は慌てている。すでに3月だというのに、前方は真っ白になった。
内子インターチェンジで高速を降り、五十崎町を抜ける頃には雪は止んでいた。ほんの一瞬、春の気まぐれだったのか。
ところが目的地の城川町に入ったところで、再び雪が舞い始めた。時々明るい陽が射すのだが、また突然視界が白くなるほど吹雪いたりする。もともと山間で雪の多い土地ではあるけれど、この季節の雪はさすがに珍しいと地元の人も怪訝な顔だ。春の椿事か。とはいえ、それさえなにやらやさしげではある。
雪が舞えば温かい食べ物が恋しい。まずは道の駅「きなはい屋」に寄って、奥のうどん・そばコーナーを目指した。実はここに、地元産のベーコンを使った名物うどんがあると聞き込んでいたのだ。断っておくが、どうしても食べたいわけではなかった。そりゃそうだろう、ベーコンとうどんの相性はどう想像してもベストカップルとは言い難い。
ところがメニューのどこにも「ベーコンうどん」が無い。無ければ却って気になる。尋ねてみると、それは「きのこうどん」のことだろう、という。しめじとベーコンの入ったうどんだそうだ。俄かに興味が湧いて、早速それを注文した。
これが意外にいけました。細かく刻んだベーコンとしめじを一旦煮て、うどんの上に盛ってある。一口目にベーコンの香りがプンときて、軽い違和感があるが、食べているうちに馴染んで、旨みが立ってくる。しめじとベーコンの相性がよく、うどんとの仲人役を果たしている感じだ。癖があるぶん、気に入ると忘れ難いかもしれない。
地元産のベーコンを使うというテーマが先にあってのメニューらしいが、なかなか工夫したもんである。そばもあって、いずれも一杯460円。このコーナーは午後3時までの営業だから、機会があればお試しあれ。
城川町には茶堂が多く残っている。茶堂というのは、旧街道沿いにかつては集落ごとに建てられていた一間四方のお堂で、三方が吹き抜け、奥の一面が壁で、多くはそこにお地蔵様や庚申様が祭られている。お遍路さんなどの旅人が、歩き疲れるとそこで一服してゆく場所で、時には集会所として使われた。いわば誰でも自由に使っていいパブリックな空間で、昔の人の知恵といってよい。
お遍路さんの多いシーズンには、集落の人々がここで旅人にお茶のサービスをした。四国ではそうした無償の行為を「おせったい」と呼ぶ。接待という言葉には汚職や談合やらのいかがわしいイメージが染み付いているが、四国で聞く「おせったい」は限りなくやさしく懐かしい言葉だ。
茶堂はおせったいの場所であり、同時に他郷の人との交流の場所、情報交換の拠点でもあった。それを集落の人々が総出で維持管理し、活用したのだから、つまりは住民自治の拠点でもあったわけだ。イギリスで発祥したパブ(パブとは本来パブリックハウスの略称)と似ている。
それは誇るべき文化であったと思うが、国道が拓かれ車社会が到来するにつれて忘れられ、過疎化によって維持管理も困難になっていった。次々に朽ち果て、或いは取り壊されていくなか、近年まで集中的に残っていた地域が城川町とお隣の野村町で、いずれも町内に200余りの茶堂が残っていた記録がある。
それは一面では開発から取り残された地域を意味してもいたのだが、今となっては茶堂の残る農村風景はとても貴重なものだ。なぜならそこには「おせったい」の心も共に残っていると思われるからだ。現在、城川町には50余の茶堂が保存されている。
茶堂はおせったいの場所であり、同時に他郷の人との交流の場所、情報交換の拠点でもあった。それを集落の人々が総出で維持管理し、活用したのだから、つまりは住民自治の拠点でもあったわけだ。イギリスで発祥したパブ(パブとは本来パブリックハウスの略称)と似ている。
それは誇るべき文化であったと思うが、国道が拓かれ車社会が到来するにつれて忘れられ、過疎化によって維持管理も困難になっていった。次々に朽ち果て、或いは取り壊されていくなか、近年まで集中的に残っていた地域が城川町とお隣の野村町で、いずれも町内に200余の茶堂が残っていた記録がある。
それは一面では開発から取り残された地域を意味してもいたのだが、今となっては茶堂の残る農村風景はとても貴重なものだ。なぜならそこには「おせったい」の心も共に残っていると思われるからだ。現在、城川町には50余の茶堂が保存されている。
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※文・写真は『四国旅マガジンGajA020号』(http://www.kk-spc.co.jp/gaja/)からの転載です。基本的には発売した2004年5月1日時点のデータですので、現在は変更になっている場合もあります。なお、住所・電話・料金は2005年4月15日現在のものに更新しています。あらかじめご了承ください。
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