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「土佐の赤牛」「土佐の赤牛」








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土佐は山国
 南国土佐といえば、黒潮寄せる海のイメージが強烈だ。鯨や鰹を筆頭にきらきらと豪快な海の幸が溢れてもいる。だが、地図を見ればすぐに判るとおり、土佐は面積の大部分が山間部という山国でもある。板垣退助らの自由民権運動は、土佐の山間部からふつふつと沸き上がる庶民のエネルギーをその基盤とした。「自由は土佐の山間から」。明治の気骨の片鱗にでも触れてみたくて、土佐の山間を訪ねることにした。
 今回の狙いは赤牛である。土佐牛は近年、肉好きの一部で令名が高いが、スーパーなどで目にすることは少ない。それなら産地まで出かけてやろう、例に
よって食い気と旅っ気の合併症が発動した。土佐の
赤牛は四国カルスト台地や足摺岬などでも飼われているが、今回は嶺北地域に足を向けることにする。このところ「嶺北牛」の名前をよく耳にするからだ。
 一年ほど前に高知のボスから紹介された人物で、確かそんな仕事の人がいたはず、と名刺の束を繰ってみると、「(株)れいほく畜産 専務取締役 中町幸蔵」というのがある。早速電話を入れて…そんな行きずりの縁だけが頼り。

嶺北
 前夜は高知市内に一泊した。実を言えば「嶺北」がどこにあるのか正確に知らなかったせいだ。嶺北という地名は地図にはない。ところが良くしたもので、その日に会った土佐町からのグループが「嶺北ならウチのほうです」と言う。もらった名刺には「道の駅土佐さめうら」とあった。どうやら早明浦ダムのあたりらしい。
 翌朝、車で高速道を走り大豊インターで降りる。嶺北がどの範囲を指すのかは良く知らないが、中町の名刺には「自治体資本」とあって土佐町・本山町・大豊町・大川村の名が書かれてある。どうやら4つの自治体が資本を出し合って作った会社らしい。
本山町と土佐町の間には郡境があって、それぞれ長岡郡と土佐郡である。行政区分なんか無視して、まとまっているのが頼もしい。

桂月
 その郡境を越えて、右手に「道の駅土佐さめうら」を発見。ちょっと寄ることにしたら、昨日会った駅長の山中義雄が目ざとくみつけてコーヒーをいれてくれた。四方山話のあいだに紹介された相手に、どこかで見覚えがある、と思ったら、昨年の夏大川村へ招かれた時に、会場に地酒を差し入れてくれた造り酒屋の社長だった。
 奇縁にすがって蔵を見せてもらうことにする。まず案内されたのは酒銘の由来になった大町桂月の資料館。今ではその名を知る人も少ないが、桂月は明治の文壇で盛名をはせた紀行文の名手で、高知の生まれ。ただし全国を歩いて高知にはめったに帰らなかった。だから足跡は各地に残って、資料集めは容易でなかろう。
 館は古い土蔵を改装したもので、社長の澤田輝夫いわく「日本で一番小さな文学館」。入場料200円を払うとカップ酒がついてくるのも洒落ている。
 桂月の土佐酒造は値段の手頃な普通酒にこだわる蔵で、いわゆる特定名称酒はごくわずかしか市場に出さない。そのわずかな絞りたての生原酒を飲ませてもらった。原酒だからアルコール度数は20度ある。腰の据わった良い酒で、どんどん後を引く。結局、ラベルも何もない飲みかけの瓶を一本もらって蔵を後にした。

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※文・写真は『四国旅マガジンGajA004号』(http://www.kk-spc.co.jp/gaja/)からの転載です。基本的には発売した2000年5月1日時点のデータですので、現在は変更になっている場合もあります。なお、住所・電話・料金は2005年3月15日現在のものに更新しています。あらかじめご了承ください。
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